今日、吉野家の阿部社長が大学のオムニバス形式の授業に講師としていらっしゃった。その内容を簡単まとめたのは以下である。
- 全社員数対全店舗数は1:1くらい。一部アルバイト店長もいる。
- 6:4で直営店とFCの比率。外食ではこれくらいの比率で直営がマジョリティーのは吉野家とケンタッキフライドチキンだけ。
- これからもっとも伸びるのは中国。今台湾では16店舗。全部直営。
- 出店の考え方:人類のいるところに食を提供する場を作る。
- アメリカビーフ輸入停止からの売り上げ前年比ではすき屋、松屋、吉野家の順番ではあるが、実際の売上高では負けてはいない。
- 他社は元々牛丼だけではなかったから影響は吉野家よりも小さかった。
- 牛丼だけにこだわるのは一定量をもって味を維持するため、効率を上げるため。
- 吉野家牛丼の味はある量以上の材料とたれを繰り返して煮込まないと出せない。
- 一日500食を見込めないと味を維持できないから出店しない。
- 営業利益率17%くらい(2002年)。15%以上の部分は全部品質に還元する。
- 社員年収は外食他社よりは年間100万円くらい高い。
- 他社はアメリカビーフがなくなってから牛丼を再開したが、効果が限定的だと実証された。
- 株価が下がらなかった理由:無借金の健全経営。キャッシュが200億ある。アメリカビーフがいずれ再開する。投資家から見て下がる要素がなかった。
- 吉野家の牛丼の価値の構成要素:うまい、やすい、はやい。
- 創業店は築地店。魚市場にあった。そのときは「うまい、はやい」だった。
- 客が店に入るとき、いつもと同じ味を期待するため、いつもと違う味だったら満足しない。そのため、どの店で食べても同じ味を出せるように全材料、用具などが全店で同じ。
- 食べ残し=客の商品に対する不満。
- 吉野家のたれはしょうゆの量よりも白ワインが多い。
- 一日三回棚卸。毎日15時までのデータでその日の売り上げなどをシステムで集計し、次の日の原材料の発送量を決める。
- 新商品鉄鍋膳の導入には新しい長期器具を必要なため、企画から発売開始まで全部で2ヵ月半くらいかかった。
- 質問:豚丼の10円値上げの必要があったのか?味が本当によくなったのか?新豚丼発売の前日の肉などは廃棄したのか?
豚肉の卸制度の健全化によって相場が上がっていたというのが背景にある。しかしこれが値上げの直接原因ではない。たれを変えることによって味が大幅によくしたのが原因。前日の肉は廃棄した。実は少し前から少しずつ新しいたれを使用していた。最後に導入する一部の店舗だけで肉などを廃棄した。 - 質問:マクドナルドのように過剰労働などの労働問題はないのか?
マクドナルドは30分単位で労働時間を計っているが、吉野家は6分単位で、2捨3入で計算しているから問題ない。 - 質問:他社は券売機などを使っているが、吉野家はなぜ直接の払いにこだわるのか?
食を通してのコミュニケーションにこだわっているため。店員とのコミュニケーションのチャンスを少し残したい。しかし、今「一言もしゃべりたくない」お客さんも出ていてるし、牛丼単品ではなく、ミックスメニューになっているから、今までのU字カウンターがうまく機能しなくなってきている。そのため、今後は多様な対応をするつもり。アメリカビーフ再開後はU字カウンタの牛丼専門店とテーブルも置くミックスメニュー店の二種に分けると考えている。 - 吉野家のコアの顧客層は18歳から35歳までの男性。今後は女性も、他の年齢層も顧客層として拡大したい。
- 質問:松屋などとの客層は違うのか?
吉野家は一人客が圧倒的に多い。何人か集まっている場合松屋などを選ぶようになる。今度のミックスメニューによってグループ客や家族連れの客層を拡大した。 - 質問:社長はアルバイトから始めて今社長になっているが、どの時期が一番面白いのか?
next is more fun と思っているのだから、次に向かう今の仕事が一番面白い。 - 質問:ヨーロッパにはまだ出店していないが、いつになったら出店するのか?
ヨーロッパにはもちろん出店したい。最終的にはインドにも出店したいから(笑)、もちろん牛はやらないけどね。今はアジアに力を入れている。人的な制限によって同時に進行できるのは3カ国ぐらい。出店に関する制限はそれだけ。 - 質問:なんで味噌汁をセットでつけないのか?
単品を提供し、そのコーディネートをお客さんに任せる。一部のお客さんには単品でいいから安くしてくれという志向もあるはずだから。 - 質問:吉野家本郷店は休業中ですが。
本郷店は店舗ランキングの中でかなり低い店で、実は一部の成績のよくない店は家賃だけを払っていたほうが安いのだ。アメリカビーフが再開すれば休業中の店も再開する。
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