最近、女の人がマッサージを受けながら中国語でマッサージ師と話す香酢のCMがある。このCMの中国語はかなり不自然なものだ。
マッサージを受けている女の人がマッサージ師に対して、「きれいですね」といって、マッサージ師が「そんなことないですよ」というやり取りなのだが、ここで変なのは、「そんなことないですよ」の直訳の「没有這回事」をマッサージ師が中国語で言っていることだ。
確かに、「そんなことないですよ」を直訳すると「没有這回事(mei2you3zhe4hui2shi4 メーユージェホイシー)」となるが、中国語ではこれは割りと強い否定なので、ほめられたときの謙虚な気持ちも込めている答え方ではなく、相手の言っていることを否定する意味になる。
だから、ニュアンス的には、マッサージ師は「きれいですね」といわれて、「何を言ってるんだ、違うよ」と答えたことになる。これはいくらなんでも誤訳だといわざるを得ない。
このようにほめられたときに、中国語での一番普通な答え方は「過奨了(guo4jiang3le0 グォジャンレ)」である。これを日本語で直訳すると「ほめすぎですよ」となり、ぴんとこないかもしれないが、日本語では「そんことないですよ」というように中国語ではこの言い方は同じ気持ちを表す答え方となる。
中国語と日本語の間では同じ漢字を使っているので、直訳すれば意味がそのままの場合が多いが、一部の漢字は日本は古い時代の意味で使っていて、中国ではこの100年以内に使われるような新しい意味で使っていることが多々ある。また、しゃべり言葉になると、決まった言い方はほとんど直訳では対応しないので、気をつけなければならない。