CMしか見ていない人に聞くと、「Delightの会社だ」という答えが返ってくるかもしれない。そういう意味ではこのCMはとても成功しているだろう。
でも、実際にはJTは日本たばこ産業で、日本最大のタバコ会社だ。CMでいうDelight(喜びの意味)の部分は、この会社がタバコ事業のほかにやっている医薬品事業、食品事業の二つの事業と社会活動のことだ。
調べてみたら、JTの医薬品事業と食品事業の売上高は全体の7.5%に過ぎない。利益で見ると医薬品事業は赤字で、食品事業は全体の営業利益の2%しかない。これではDelightの会社だとはとてもいえないだろう。(もちろん、タバコ事業もDelightだといえばDelightの会社ではあるが。)
実は問題はJTにあるわけではない。タバコ業界はテレビ、ラジオやインターネットなどでのタバコ広告を自粛している。実際に打てるのは喫煙マナーに関する広告だけである。これがJTがDelightのCMを打つ背景だろ。
タバコ業界が自粛するのは、社会への配慮が主な理由だろう。でもこれはおかしな話だと思う。
本当に社会がそこまでこういう業界に厳しいなら、酒に対してもなんらかの措置を取るべきなのではないでしょうか?
タバコと酒は本質的には社会にとって同じだと思う。依存性も、過量の場合の体への害も、他人への迷惑も、そしてコミュニケーションの手段として物事を円滑にするのも、税金面では社会にとっては必要不可欠であることも。
なのに酒は自由にどんな宣伝でもできる。一方でタバコの会社はほとんど利益のならないDelightを宣伝せざるを得ない。社会のこの二つの産業への扱い方に問題があるのではないか。
僕は非常にタバコが嫌いな人だ。しかし全面禁煙を望まない。酒がこの社会で許されているように、タバコに対しても、許されるような仕組みを早く構築すべきだと思っている。