2005年12月12日月曜日

読書 中国農民調査

 二年くらい前中国で出版され、大きな話題になったこの本が、日本でも出版された。
 中国の農民の今の現状、受けなければならない、我慢しなければならないいろんな不平等な待遇、法律がまったく無視されて、一部の人が農民を搾取しているなどのことを、実際の調査によって明らかにし、その問題とそれの解決(もちろん完全な解決ではないが)の過程を記述し、まとめたレポートなのである。
 一つ言わなければならないのは、「刊行2ヶ月で、発禁処分」というのが宣伝文句になっていて、中国でこの本が禁書になっているような言い方をしているが、それは事実ではない。
 まずこのレポートが本になって出版される前に、党関係の有名な雑誌で連載されていて、本になって全国の本屋に並べられてから最初の一ヶ月だけで10万冊売られた。その本と、その作者、さらにそれに反映されている問題は中国中央テレビ(CCTV)、新華ネット(新華社のニュースサイト)をはじめ、各マスメディアにも取り上げられていた。指導部がその本に書かれた問題について直接指示を出すほどの影響力だった。
 そして、今でもその本は買えるし、ネット上では簡単に検索すれば、各大きなポータルサイトや、読書サイトではその全文を読める。僕も実はインターネットでそれを見つけて読んだのである。

 この本が出版され、話題になったのは、ちょうど農民問題が大きくなって、中国政府がいろいろな実際の解決策を打つ時だった。実際に政府が農民問題について調査をし、問題の解決策を作るのはその前のかなり早い時期から始まっていた。いろんなメディアで農民問題が取り上げられていた。この本は農民問題を伝える一つのメディアに過ぎなかった。ただ、この本ほど詳しく、生々しく実際に起きている問題を伝えている報道がほとんどなかったため、大きな話題になった。さらに、この本が一般市民の農民問題に対して関心をもつきっかけとなった。
 本の内容は実際に貧困地域の農村での問題を赤裸々に記述し、それを生み出している行政、制度、法律、社会、さらにモラルなどの面の問題を指摘して、そして国がどのような政策を出し、問題はどのように解決されようとしていたのかをも書いていた。本で記述された各レベルの官僚は、中央指導部メンバーを含めて、ほぼ全員実名だった。
 中国人の多くは涙を流してこの本を読んでいたという。この本は中国にとっての農村農民の重要性、そして農村と農民に起きている極めて大きな問題、それを解決しなければならない緊迫な現状を知ることのできるとてもいい本である。そしてこれらを理解することで、今中国がとっている国内政策の多くをよりよく理解できるに違いない。

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