2005年10月26日水曜日

ものづくりにIT

 今日学校の授業で株式会社インクスの社長が話に来た。しかも今回の講義の内容は、先週スタートした東京大学モーターショーでの会社紹介の発表の内容そのままだった。
 ものづくりにITを導入して、成功した代表的な企業で、小泉首相も会社を訪れるほどと大学の先生が紹介していた。今までもものづくり系の会社の社長やIT系のベンチャー社長の話をたくさん聞いてきた。話すことは大体自社の商品の紹介と企業の大変さだった。だから、今回の話に対してもそこまでの期待感はなかった。
 しかし、実際にこの会社は違った。「世界一速い」を会社の目標として抱えて、さらに、それをITを使って見事に実現してきた。
 金型の設計から製造まで、さらに実際の製品の製造もやる会社だが、その技術の高さは驚くものだった。
 まずは自社に依頼が来る全世界のメーカーの携帯電話の部品の金型製造だが、各社のすべての部品を分析することによって、同じ種類の部品の各社の違いはごくわずかであって、同じ金型で先端部分だけを変えれば全メーカーの同種類部品を一つの金型で生産できるとわかった。このように生産する部品の金型の標準化を全部品について進めてきた。
 さらに、自社ソフトを開発して、製品デザインがそのソフトで行われれば、同時にその金型のデザインも自動的にできるようにした。それだけではなく、設計から製品成型までの全工程のすべての情報をネットワークを通して、各機械からファラオと言う自社開発のソフトに送り、ファラオがその全工程を管理するようなシステムを作り上げた。このソフトによって、従来ベテランでないと製造できないと思われてきた全工程の90%以上(99%くらいらしい)はパソコンやバイトなどの非熟練者によってできるとわかった。これで製造工程の人員数を大幅に削減でき、効率も大幅にあがった。また機械とバイトの人への指令は全部ファラオが出し、そのチェックもファラオが自動的に行い、さらに自動処理をし、データを再び機械に戻すというサイクルを繰り返すので、伝達によるミスもなくなった。
 ハードの面も研究開発に力を入れている。その一番重要なのは自社開発の超細エンドミルの開発によって、携帯などの全部品の金型を切削によって作ることに成功した。
 このような製造のIT化とネットワーク化、生産技術の進歩によって、今まで携帯の本体の設計から製品出来上がりまでの期間の45日間を45時間に短縮した。これはもちろん世界一速い製造スピードである。
 当たり前だが、このように会社の目標をとことん追及し、自社の技術に自信を持ち、さらにそれにこだわり続けて、業界の常識をひっくり返すことはなかなか中小企業では起こらない。ITの導入が会社の効率上昇につながるとは一般的に知られているが、その程度によって効果が違うのも知られている。大体中途半端の導入の場合は望むほど効率あげられないとよく聞く。やはりインクスのようにとことんITによる効率向上を追求しないと、IT導入による満足するペイは得られないだろう。
 インクスは今その自社のノウハウやソフトを使ってコンサルティングもやっている。生産技術のコンサルティング分野は日本のこれからの期待できる分野なのではないか?インクスが示した例は日本ものづくり業界全体へのヒントになるでしょう。



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