2009年5月3日日曜日

親指シフト

親指


 一ヶ月半くらい前から、PCでの日本語の入力方法を仮名入力の一種の親指シフトに変えた。



 実は昔一度かな入力にチャレンジしたことがあった。普通のローマ字入力は打鍵数が多くて、遅いと感じたから、かな入力にして入力スピードを上げようとした。結果は、右手の小指が不器用すぎて、ミスが多く、実用的なスピードにあげることができなかった。その後もう一度試してみたが、やはり右手の小指のせいでだめだった。



 一ヶ月半前にネットで親指シフトの説明を読んで、これならいけるかもしれないと思った。理由は二つだ。親指シフトのかなの配置は普通の仮名入力より合理的で、小指のような使いにくい指への負担が低い。もう一つの理由は一つのキーに二つのかなを配置することで、ほとんどアルファベットのキーだけを使う。これなら数字キーや符号キーなど「遠い」キーに指を運ばなくてすんで楽だ。



 ちょっと親指シフトの説明をすると、ひとつのキーに二つか三つの仮名を配置して、普通に押すとそのキーに配置された一つ目のかなが入力されて、親指で押すシフト専用のキーと同時に押すことで二つ目のかなが入力されるという仕組みだ。たとえばaのキーには「う」と「を」が配置されていて、普通にa を押すと「う」が入力されるが、親指シフトキーとaを同時に押すと「を」が入力される。



 この二つのキーを同時に押すというのは最大の難点となる。いままでゲームの操作でしか経験したことのない二つのキーの同時押しに慣れるのに2週間以上もかかった。タイミングをそろえるのが難しかった。



 でも親指シフトにすると決めてからはこれしか使わないと徹底したので、割と早く慣れて、最近スピード的にも問題なくなってきた。後2ヶ月くらいすればローマ字入力よりは確実に早くなると思う。



 この話をすると必ずスイッチングのときの大変さを聞かれる。それは確かに大変だ。でも将来の時間の節約を考えると十分に価値のある投資だと思ってやった。今はその判断は正しかったと思う。


9 件のコメント:

杉田伸樹 さんのコメント...

はじめまして、「親指シフトウォッチ」というブログを書いている杉田と申します。
日本語を外国語として使っている人が親指シフトを使っているのははじめて見ました。親指シフトの利点はここに書かれている通りだと思っています。また、スイッチングのコストと長期的な利益との関係、それを考えた上で親指シフトが価値のある投資だというのにも同感です。このように、きちんと親指シフトの利点を理解されていることは私にとり大変うれしいことです。ぜひ、親指シフトを活用してたくさん日本語の文章を書いてください。
ところで、私は前から親指シフトを日本語以外に活用することに興味を持っています。詳しいことは私のブログの右のサイドバーにあるリンク集「ケーススタディー(日本語以外)」をご覧いただけたらと思いますが、その中には中国語も入っています。
私自身は中国語の親指シフト入力を考えたわけではなく、別の方が、それもかなり前に考案しています。もし中国語で親指シフトを使うことにご興味がありましたら、ぜひ普及活動(笑)をしていただきたく思います。
今後もよろしくお願いいたします。

Takurin さんのコメント...

杉田様
 コメントありがとうございます。
 杉田様のブログのリンク先の中国語のケーススタディで提案された入力法(菅野さん案)を読ませていただきました。非常にいい取り組みだと思いますが、気になった点が三つありました。ちなみに私が中国語を入力するとき、五筆字型入力法を使っているので、それぞれの点の五筆との比較も一緒に書きます。(似たような入力法として双�靭入力法もあるが、私は使ったことがないです。)
 一つ目は各キーに配置されている要素が6つ(か5つ)ずつ(子音3つ+母音と四声3つ)あることです。日本語の場合は一つのキーに2つか3つの仮名が配置されるので、覚えるのも簡単だったが、6つになると、たとえ同じ子音の四声が違うだけの違いでも、やはり記憶する難度を上がってしまいます。五筆の場合は、一つのキーに配置される要素は6つから10つともっと多いが、その多くは類似したものであり、しかも入力時は親指シフトキーとの対応を意識しなくて済むので、より楽です。
 二つ目はこの入力法で採用されているピンインの分解方法は中国人に馴染みがないことです。義務教育で学ぶピンインの規則と違うルールを覚えないといけないので、混乱が生じやすいと思います。同じような問題は五筆にもありました。86年版では漢字をパーツに分解するルールが不自然な所が多かったので、教育上の理由などもあって、96年版では不自然なところがかなり境善されました。

Takurin さんのコメント...

 三つ目は、提案されている入力法はやはりピンインによる方法であることです。ピンイン入力の問題点は打鍵数が多いことと同じ入力に対する選択肢が多いところです。打鍵数の削減はもちろん重要ですが、最近のピンイン入力法でもそのための工夫をたくさんなされています。需要なのは複数候補の問題です。日本語入力もそうですが、入力を終えてから、複数の候補から言葉を選択する必要があります。これが中国語入力の効率が悪い最大の原因でした。確かに四声を入力時に入力することで候補数を減らすことができるが、その効果は限定的だと思います。五筆はそれを解決するために提案されていて、なるべく同じ入力に対する複数候補が生じないように工夫されています。
 以上は気になった三点です。五筆と比較したのはこの入力法をマスターするのに必要な努力は五筆とほぼ同じくらいかなと感じたからです。五筆の普及はその効率の良さとメディアによる大々的な宣伝にも関わらず、その習得の難しさが原因でかなり限定的なものになっています。ピンイン入力法がかなり進化して、非常に効率的になったのも一因だと思います。(その間に五筆の進化はありませんでした。)ですので、親指シフトによる中国語入力を実用レベルで使われるようにするには、もっと根本的に効率を改善する入力法にしない難しいかと思います。
 以上親指シフト中国語入力法についての感想です。

杉田伸樹 さんのコメント...

Takurinさん、早速詳しいレスポンスをありがとうございます。中国語を使う人のコメントはとても重要です。
この入力方法は私が考えたのではないので、もう少しきちんと読んでから私が答えられる範囲でお答えしたいと思います。少し時間をください。場合によっては考案者の方々に助けてもらうかもしれません。
その様な中途半端な状態で、またTakurinさんがお忙しいに違いないであろうという中で、心苦しいのですが、本件に対して中国の方々の関心を引き起こすようなことはできますでしょうか。例えば、同僚の方々に話すとか、あるいは中国語入力に関する掲示板やフォーラムで問題提起してみるとかです。
中国語入力の改善で利益を受けるのは実際にコンピューターで中国語を使っている人たちです。このような人たちに、改善の可能性があることを知ってもらうことは意義があることだと思います。親指シフトはそのような可能性を秘めていると私は信じています。
大変厚かましいことではありますが、親指シフトの良さが分かっておられるということで、お願いする次第です。

杉田伸樹 さんのコメント...

Takurin様
まず最初に、私のサイトからのリンクが切れていた村田さんの論文のうち、(1)『デジタル時代の中国研究 2 キーボード入力方式について 』は付属資料とともにリンクが回復できました。これで村田さんの案についても参照することができるようになりました。
このため、以下の私のコメントは菅野さん、村田さんの両案について述べることにします。なお、菅野さんの案はいくつかあるのですが、基本的には『2タッチ字音入力法』に述べられているものを対象にします。
Takurinさんは菅野さんの案しか見ていない時点でコメントされていますので、これからの私のコメントはTakurinさんのコメントへの回答よりは広くカバーすることになります。この点、ご了承ください。

杉田伸樹 さんのコメント...

1.各キーへの文字の割り当て数
菅野案では、確かにおっしゃるように各キーに配置される要素が5ないし6となっています。ただ、左右の親指シフトキーとの同時打鍵で区別されるのは文字キーの単独打鍵と何らかの関係を持ったものです。
具体的には、子音(声介)では、親指シフトキーとの同時打鍵は単独打鍵で得られる音にIまたはUを付加したものになっています。また、母音(韻調)では、親指シフトキーとの同時打鍵は単独打鍵で得られる音と声調だけが異なったものとなっています。
すなわち、記憶の負担という面では5ないし6をすべて覚えるということではなく、基本的な子音、母音を覚えれば親指シフトによる区別はある意味でそのバリエーションとなります。ですから、記憶の負担という面ではそれほど大きくないと考えて良いかと思います。
日本語の親指シフト入力でも、異なる手の親指シフトキーとの同時打鍵(クロスシフト)は基本的には濁点をつけることになります。このため、清音と濁音の位置を別々に覚えなくても良いことになっています。これと同じようなことが言えると思います。
村田案では声調に関する情報を入力しないので、かなり簡単になります。基本的には各キーには2要素が割りつけられます。親指シフトは、頻出漢字等をワンタッチで出すために使われます。
なお、菅野案、村田案ともに、1字音の入力は基本的に2打鍵で行われるという点では、双ピン入力法に類似しています。これは村田さんの論文に書かれています。

杉田伸樹 さんのコメント...

2.ピンインの分解方法
中国で現在教えられている方法は知らないのですが、菅野さんの論文では、このような分解方法もかつて教えられていたとのことなので、ある程度の慣れで克服できる問題かなという気がします。
なお、M式(これは子音と母音を別々に入力するものなので、ローマ字入力や双ピン入力法とも似ています)という入力方式では日本語の拗音(「しゃ」など)を入力する際に、母音キーに親指シフトを使うことで得られるようにしています。これとも少し似ているなという気がしています。
村田案はより普通な分解方法のようなのであまり違和感はないかもしれません。

杉田伸樹 さんのコメント...

3.ピンイン方式であること
確かにおっしゃられるように、ピンイン方式には問題もあります。ただ、打鍵数に関して言えば、両案ともに1字音は2打鍵以内となります。これは、普通のピンイン入力の場合より大きな節約になります。村田さんの論文では、40%以上の削減となっています。
入力に対する選択肢の問題についてはおっしゃる通りのところはあります。日本語入力でも、仮名漢字変換がわずらわしいのでそうした変換動作を必要としない「漢字直接入力」という方法があります。
ただ、この問題はソフトウェア的な解決法が有効なところでもあります。例えば中国語では音節の数が増えれば選択の範囲は飛躍的に少なくなります(菅野論文参照)。ですから辞書やユーザーの使用傾向の分析が良くなれば、かなりの確度で正しい漢字を選ぶことができるようになります。
実際、日本語入力でも仮名漢字変換の精度向上は大きな関心事で、ジャストシステム社のようなIMEを作っている会社は、これに大きな精力をつぎ込んできました。Takurinさんのコメントにある「最近のピンイン入力法でもそのための工夫をたくさんなされています。」ということからすると、同様なことが中国語でも起こっているのかなと推測します。
複数候補から正しいものを選び出すための手段が良くなっても、文字入力そのものを改善することは意味があることだと考えています。打鍵数を削減することもそうですが、自然で労力が少なくて済む文字入力の重要性は変わらないというのが私の意見です。
ピンイン方式は、音韻から入っていきます。日本の仮名漢字変換も(ローマ字入力でも仮名入力でも)音韻から入っていきます。おそらくこれが考えながら入力する場合には自然なのだと思います。
以上が、とりあえずの私のコメントです。思い違いなどもあるかもしれませんが、まずはTakurinさんにボールを打ち返しておきたいと思います。

杉田伸樹 さんのコメント...

村田さんのもう一つの論文も、村田さんからの提供を受け、アップロードしました。ご覧ください。